『わたしはあなたの涙になりたい』を語りたいだけ
めっちゃネタバレあります!!
ですので未読の方がこちらの記事を読む場合はご注意下さい。
こちらで書いていることはあくまで個人的な感想でしかありません。
何かを否定したりする意図は一切ありませんので悪しからず。
では本編へ。
『わたしはあなたの涙になりたい』が抱える二面性
『わたしはあなたの涙になりたい』はいわゆる難病モノの作品です。
しかし同時に難病モノのアンチテーゼでもあり、かなりメタ要素の強い作品でもあります。
今回はその後者の部分に関して触れることが多くなると思います。
まずこの作品には、このアンチテーゼとして触れるべきエピソードがいくつもあります。
・東日本大震災の話
・義足の野球少年の話
・指を失ったピアニストの話
・いわゆる難病モノの話
これらに共通して言えるのは、誰かの悲劇や命を「物語」としていることです。
東日本大震災の話では哀れな被災者に同情を誘うような記事が物語になっており、義足の野球少年の話では脚を失った少年のサクセスストーリーを描き、指を失ったピアニストはネットで晒し上げられ憐れみの対象とさせられ、難病を患った少女はその命を愛を語る美談へと変えられています。
そしてこれらの「物語」が綴られる中、作中で不治の病を背負ったヒロインが叫びます。
私は誰かの「物語」になんてなりたくない!
私の命を「物語」として消費しないでくれ!!
――と。
個人的にはこれがこの物語の本質の1つだと思いました。
――東日本大震災の被災者も
――義足の野球少年も
――指を失い難病を患った少女も
みんな苦しみや絶望を分かったような顔で同情され、「物語の道具」とされてしまったのです。
そうです、この作品は
キャラの命や苦しみを「物語」とすることを嘆き、その「物語」を当たり前のように消費することへの怒りを書いた作品です!
少なくとも私はその一面を感じました。
大震災の被災者や障害者のサクセスストーリー。
そして小説で流行っている難病モノ。
これらに対しての作者の怒りを確かに感じる1冊でした。
そして一方で、この作品は「物語」を消費することを肯定もしています。
主人公の最後の方の場面で言う
「この物語で誰かが救われるなら、消費されたって良い」
「物語でしか救えないものもある」
これらがそれを表していると思います。
結局この作品は「物語」の消費を否定も肯定もしており、それらの選択を読者に委ねている1冊だと思いました。
そして肯定も否定もしているからこそ、この作品は
難病モノでもあり、難病モノへのアンチテーゼ
でもあるんだと思います。
少なくとも私は『わたしはあなたの涙になりたい』という作品にこのような2面性を感じました。
だからこそこの作品は
普通の難病モノと一線を画した傑作
と個人的には思っています
個人的な「物語」への考え方
「物語」を消費することに関して、私はかなり肯定派です。多少の諦めもあるうえでの肯定にはなりますが…笑。
やっぱり物語を消費することは仕方のないことだと思います。実際、やはり愛着あるキャラの命が失われる瞬間っていうのは涙が出てきますし、キャラが絶望したり苦悩したりするのは読んでて苦しくも作品に味が出て好きです。そして絶望や苦悩した先にあるハッピーエンド――いわゆる「美談」には心を動かされます!
確かにこれは物語を――キャラを消費しているのかもしれませんが、やはりその先にある楽しさや感動には抗えないですし、それらはちゃんと私の心に残るものになっています。勿論、時間と共に風化していってしまうのもまた事実ですが…笑
それでもやはり「物語」を消費することによって――それこそ『わたしはあなたの涙になりたい』を消費することによって、こんなブログを書こうと思えたりします。
ですので私は「物語」を消費することに対してかなり肯定派です。
ただ1つ、そんな肯定派な私でも肯定出来ない時があるんですよね。
それは
キャラが使い捨てにされてると感じた時です!
本当に個人的な感覚の話なのですが、たまにこういうのを感じる時ありませんか?
物語の都合上、主人公の過去に傷をつける必要があるからとりあえず恋してた女の子殺したり。
ゲームの話ですけど、メインのキャラのために他のルートを投げっぱなしにしたり。
こういうキャラを蔑ろにしてるのが許せないんですよね…。
キャラを殺すのは構わないけど、キャラに対してそれ相応の向き合い方をしろ!って思っちゃいます。「それ相応」は本当に個人的な感覚なんですけどね…笑
いわゆるこれが私が「物語」の消費を許せない時ですね。
どちらかと言うとキャラの消費を許せないって感じかも知れないですけど。
雑談
大体私の考えはこんな感じですね。
1つだけ言っておくと私は『わたしはあなたの涙になりたい』が大好きです!
本当に好きな作品だからこそ、こんな記事を書いてるのを知ってほしいですね。
ちなみに下記の記事が面白いです。(これ読めば私のブログなんて読まなくていいかもw)
後、この作品を難病モノとして考えるのも個人的には間違っていないと思います。それもまたこの作品の一面であることには間違いないですから。(何か言いたくなる気持ちも滅茶苦茶分かるけど…笑)
実際、星海社の編集部で議論された時には「普通の難病モノ」として議論されています。編集者でもそういう捉え方をするということです。(これも何か言いたくなる気持ちになりますが…笑)
こちらの「あまりにキレイな問題作に議論沸騰!」部分です
とりあえず『わたしはあなたの涙になりたい』は難病モノのアンチテーゼの要素もあるんだよ~ってお話でした。
少なくとも私はそういう意図があると感じ取りました。